Kiss Of Life

 なんでもない話。

 とにかく寒い。あまりに寒いので、自分だけが太陽から差別されているのではないかとの疑念が頭をよぎったが、そんなミニマムな嫌がらせをあの大きな太陽がおこなうはずはない、と思い直した。僕がいままで経験してきた冬とは、一体なんだったんだろう。もしかしたら、2011年までのあれは、冬ではなく、夏の腐ったやつだったのかもしれない。今年初めて日本に冬がきたに違いない。僕たちはいま、冬童貞を失ったのだ。

 どれくらい僕が寒みを感じているかというと、それはまさしく筆舌に尽くしがたいほどだ。今日の夕方など、僕は凍えるあまり煙草の火を手袋に近づけすぎて、あちちとなってしまった。とてもあぶないところだった。

 それにしても、寒く静かな夜はついつい遅くまで起きてしまいますね。こんな夜には、こんな曲がいいのではないでしょうか。かすれた薄い声が、脳と頭蓋の隙間をなぞるようです。