「眠りの小五郎」の正体は何故見破られないのか、という話。

 「名探偵コナン」は、サンデーの屋台骨をほぼ単独で支え続ける長寿漫画である。主人公である江戸川コナンは、高校生探偵(笑)工藤新一が、謎の組織に盛られた薬によって幼児化してしまった姿だ。どういうことか、脳細胞のみ(いや、チンコの具合は知らないけど、おそらく脳細胞のみ)が退化を免れたのだろう、彼は周囲で頻発する殺人事件に茶々を入れつつ、自分をショタな見た目にした謎の組織を追っている。

 「名探偵コナン」で繰り返されるストーリーは、だいたいいつもこんな感じだ。江戸川コナン毛利小五郎・毛利蘭・糞ガキ大勢が、根城である毛利探偵事務所から移動する→江戸川率いる蝶ネクタイの一味が、怪しい人間若干名と懇意になる→黒タイツに身を包んだ不審者が殺人を犯し、とっさの思いつきで手の込んだ隠蔽工作を行う(数度繰り返されることもある)→警察の無能さが強調される。目暮警部(唇と鼻のあいだに海苔を貼り付けている)は、基本的に役に立たない。「うちのカミさんがね・・・」とか言わない→江戸川が、黒タイツの正体に気づく→江戸川、毛利小五郎の首筋に麻酔針を突き立てて昏倒させる→江戸川、変声器で毛利小五郎の声を真似て推理を披露する→一件落着→振り出しに戻る。

 江戸川コナンは年相応な子どもを装っている。彼が自ら推理を開陳することは稀だ。そこで犠牲になるのが毛利小五郎だ。作中、彼は幾度となくを毒を盛られているが、周囲の人間は眠ったようにへたりこむ彼を「眠りの小五郎」と称し崇めている。毛利小五郎がひとたび眠ってしまえば、事件はあっさりと解決するからだ。白鳥刑事(a.k.a.二重の野原ひろし)や、高木刑事(童貞)が、覚醒状態の毛利小五郎チョークスリーパーを仕掛ける、といった展開は、私の記憶が確かならば、見られたことがない。彼らは、毛利小五郎が膝から崩れ落ちるそのときを、静かに待っている。

 この画像をご覧頂きたい。

 「名探偵コナン」の世界では、主人公である江戸川コナンが実は工藤新一である、という事実は一部の人間にしか知られていない。彼はコトの真相を、毛利蘭(頭に鋭い突起を持つ鬼の眷属。戦闘力高め)を始めとする多くの知人にひた隠しにしている。しかし、この画像の彼はどうだろう。江戸川は、あろうことか毛利小五郎の真正面に仁王立ちし、得意気に推理を披露しているではないか。これはおかしい。なぜ、目暮(海苔)含む周囲の刑事たちや糞ガキどもは「眠りの小五郎」の真実、つまり「本当は毛利小五郎は寝ているだけで、江戸川コナンが事件を解決している」という事実に気がつかないのだろう。全ては白日の下に晒されているというのに。

 全員が激しくボケをカマしている理由はなんだろう。目暮が目暮だからだ、糞ガキは所詮糞ガキだからだ、というトートロジーでこれを一刀両断することは容易い。しかし、このクソバカ共は一応人間である。ふたつの眼が顔の前についている以上、そしてそれが開かれている以上、毛利小五郎にに対峙する江戸川が見えていないはずがない。「眠りの小五郎」の正体が見破られないのはなぜだ。大いなる謎が隠されている。俺がそう決めた。

 というわけで「西の服部、東の工藤、渋谷道玄坂のけんと」として探偵界にその名を轟かす僕が、この謎を鮮やかに解明してみせよう。じっちゃんの名にかけて。

 次週に続く!!!

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