ハチミツ

 苦手なことの話。

 「時間が経てば、どうってことなくなりますよ」「パーッと飲みにでもいきませんか」「気分転換に、別のことしたらいいと思いますよ」慰めの言葉は優しくて冷たい。口にするたび、耳にするたび、これでいいのかと迷う。

 日常は思い出を呑み込んでさらさらと流れる。身勝手な時間は美しいものすべてを道連れにしていく。ずっと切ないままでいられたら、泣き続けていられたら、とても幸せなのかもしれない。

 いつか癒える傷なら、せめて醜い痣を残してみたいと思う。僕は人を慰めるのが苦手だ。