プラチナ

 喫茶店の話。
 
 居心地のいい喫茶店には、つい長居してしまう。一度腰を落ち着けてしまうと、なかなか立ち上がる気になれない。隣のお客さんが入れ替わるのを数回眺めながら、冷めたエスプレッソをすすっている。お水の氷はすっかり溶けて、机に透明な輪っかが出来てしまった。

 気の小ささはどうにもならない。上品な店員さんのように、目に映る出来事を放っておけたらと思う。おせっかいで臆病な僕は、つい手を差し伸べてしまう。なにもできないことは、身に沁みてわかっているけれど。

 一時間ほど前に聴いた曲が、また聴こえてくる。同じ音を同じ椅子で聴きながら、同じことを考えている。同じ答えが出る問いを、繰り返し、繰り返し。