夜の東側

 上着の話。

 冬服に早々に飽きてしまった。コンサバなセンスのせいか、あまり面白い服は持っていない。紺と黒と白と茶色と、あと時々紫とかカーキとか。色味のない服と木枯らしが合わさって、顔をしかめさせにかかる。仕方が無いので、イヤホンのなかだけは明るい四つ打ちのダンスミュージックを鳴らしてある。

 口元をマフラーで隠して、大股で歩く。強くなったつもりで、傷つかないつもりで。