煙に白

 東京に雪が降った話。

 どうせ寒いならとことん寒いほうが諦めもつくというもので、雪が降り積もっていた数日間はけっこう楽しかった。通学路をでーんと塞ぐ雪だるまやら、駅前で豪快に転ぶサラリーマンのおっさんやら、雪のおかげで日々にささやかな彩りが加わったように思える。半年間ずっと雪ですと言われたら辟易するだろうけど、年に数日、白く明るい町を見るのは悪くない。

 沈む日を送るように、雪の名残りがぱらぱら落ちる。金色の雨は石畳に溶けて流れた。こんにちはより、ありがとうより、さようならは難しい。