坂の途中

 やる気!元気!井脇!の話。

 やる気も元気も足りない、ましてや井脇でもない僕にとっては、一日をうつむかずに過ごすというのがなかなか難しい。手を抜いた自分が嫌になる、という基本パターンから、目の前にある膨大なタスクにうんざりするパターン、過去の怠慢を思い出していらつくパターン、などなど。例を挙げればキリがないくらい、日常はぼんやりとした不安でコーティングされている。視界が開けた途端に新しい坂道が見えるのは、人生はそういうもんだと言われても、やっぱり少し疲れる。

 「頑張った自分へのご褒美」とか、もっとシンプルに「自己実現」とか。自分を奮い立たせる為の言葉はインターネットに遍在しているけれど、どれにもイマイチ乗り切れない僕は根っこのところで後ろ向きなんだと思う。もっとも、そういったタームが巷を駆け巡っているということ自体、みんな立ち止まりそうな自分を前に押し出す言葉を求めている証左なんだろう。

 「三月のライオン」に出てきた『自分で自分をメンテナンスできる人間しか、どのみち先へは進めなくなる』という言葉が、小骨のように刺さっている。それはもちろん真実だろうし、だからこそ僕はこうして自分のもやもやを言葉で供養して、なんとか顔を上げようとしている。でも、前に進めなくなった人がどうなるのかは、誰も教えてくれない。そして、そうならない保証は、どこにもない。