アシンメトリー

 欲望の話。

 人はなぜ自分の欲望を見逃しがちなのか、ということについてぼんやり考えていた。もっと楽しいことを考えればいいのに、ほんとうにそんなことを考えながら井の頭線に揺られているのだから、僕もなかなかの変人じゃないかと思わずにはいられない。

 「見えないのは、見たくないからである」というのは、僕が内田樹の本から学んだ重要な教訓の一つだ。人は見たいものしか見ない。見えていない、と思っても実のところ、人は目を逸らしている。そこには運動が存在している。そんなようなことを読んだ。

 知らずのうちに目を背けている欲望、それはきっとささやかで無害で、だからこそ切実で決して直視したくない類のものに違いない。非日常の博覧会のようなFB、日常の掃き溜めと化したtwitterを眺めながら、僕にも視界の外に追いやった欲望があるか考えてみた。もちろん、そんなものは見つからなかった。見たくないからに他ならない。