K.U.F.U./そしてまた歌いだす

 
 日本語ラップの楽しさを分かりやすく伝えたい、という話。

 全国7000万人の潜在的ヒップホップファンの皆さんこんにちはこんばんは、おはようございます。MC対面座位a.k.a.けんとです。今日は僕が日本語ラップの楽しさを皆さんに分かりやすくお伝えしたいと思います。

 僕はぬる〜く日本語ラップをエンジョイしているひとりのリスナーですが、ラップって嫌いな人はとことん嫌いだよなぁ、と思う今日この頃。「ちぇけらっちょ!」じゃないけど、なんかあんまり良いイメージないよね。もちろんケツメイシ「さくら」みたいなラップの入ってる曲がヒットすることはあるけれど、みんなサビが好きなんでしょ!?どうせ、サビしか聴いてないんでしょ!?それってとっても勿体ない。しかも、そういう奴に限って「EMINEMは神」とか言っちゃうんだろ、ファック!!!

 …取り乱しました、失礼失礼。まぁ、「こわい」「DQNが聴いてる」「ちぇけらっちょ!」みたいなステレオタイプを払拭するのは難しい。というか、個人の価値観の問題だし、僕がどうこうするのは無理かなーと思う。勿論、反証することはできるんだろうけど。ただ、

「ラップって、聴いててなにが面白いの?」

という問いには、自分なりの答えがなんとなくあるのです。なので、よかったらこの記事を読んで、「はは〜ん、けんとはこういうところを聴いているのだな」と納得して頂けたら嬉しいです。

 【大事】先に言っておきたいことがいくつか。
 まず、僕はハードコアなヒップホップファンではありません。「抵抗なく楽しめるよ!」この程度です。超詳しいわけでもないし、日本語ラップの歴史とか、そもそもヒップホップとはなんぞや、みたいなことも全然わかりません。「さんぴんキャンプの話しろや!!」的な批判はご容赦下さい。そういう人はB-BOY PARKで仲間を見つけてね。
 ここに書いてあることがラップの全てではないです。僕が挙げた要素をひとつも含んでいないラップの曲もたくさんあります。なので、僕が書いてるのは「僕が好きなラップの曲」の楽しみ方です。
 次に、僕は音楽的な知識はほぼ皆無です。自分の言っていることが音楽の理論に照らして正しいのか、とかはイマイチ不安。難しいこと・専門的なことはなるべく言わないつもりだけど、内容が間違っている可能性は大いにあるかも。言葉遣いとか。そしたら優しく教えてね。
 そんなわけで、この記事の趣旨は「ど素人であるけんとが、どのような自分なりの理屈で『日本語でラップする楽曲』をエンジョイしているのか?を、必死で説明する」これです。よろしく。

 では、いきましょー。

 ラップの楽曲、特に日本語ラップの楽曲を聴くうえで大きな抵抗になるのは、おそらく

・明確なメロディがない
・歌い方が変

この2点だと思います。この記事では、はっきりとしたメロディがなくて歌い方に癖のあるラップの曲は、いったいどこが聴きどころなの?ということを、僕の経験則に照らして説明したいと思います。全然ラップとは関係ない楽曲をふたつ紹介して、それぞれのいいところを解説することで、ラップの聴きどころがわかっちゃう、そんな構成にしてみました。

 まずは「メロディがないのに、なにを聴けばいいのか」という疑問を解決したいと思います。この曲をどうぞ。

 中島みゆき「ファイト!」という曲です。動画には、有志の方がイラストと歌詞をくっつけてるみたいですね。動画やコメントを見れば、なにより曲を聴けば分かるとおり、この曲では歌詞が魅力の大きな割合を占めています。曲を聴くうえで「メロディ」と同じくらい大切なのが「歌詞」です。歌詞に共感し、登場人物に感情移入することで、楽曲は人の心に残ったりします。中島みゆきの語る物語を一生懸命聞く、というのがこの曲のベタな楽しみ方難じゃないかと思います。女子高生が鞄にGREEEEENの歌詞を修正液で書いてたりしますが、あれもきっと気にいった歌詞を折に触れて読み返したい、という気持ちゆえの行動でしょう。手帳に書けよとは思うけどw

 僕がラップを聴くときに注目している要素のひとつが「歌詞」です。歌詞がよく聴こえるラップのほうが好きです。「面白い・感心する物語を聞く」というような感覚に近いかもしれません。歌声に音程がないぶん、歌詞に注目しちゃうのかも。落語が好きな人は、小噺を聞くつもりでラップを聴いてみてはいかがでしょうか。個人的な感覚ですが、歌詞が聴き取れない(凄く早口だったり、響きが英語と日本語の中間になってたりする)ラップは、ちょっとハードルが高いんじゃないかと思います。慣れてくればそれはそれで楽しめるんですけどね。
 
 日本語ラップの魅力のその1は、『聴いてて楽しい・関心する歌詞』です。「歌詞は意味分かんないけど、メロディがかっこいいからいいや〜」っていうのがラップには(あんまり)ない。だから、純粋にラップだけで出来ている曲では、パンチライン(一回で耳に残る、必殺フレーズのこと)が大事になってきます。ラップの曲を聴くときは、歌詞に注力して聴いてみるといいと思います。結構かっこいいこと言ってますよ!

 「メロディがないのに、どこを聴けばいいの?」という疑問を解決したところで、次に「歌い方変じゃね?」について。この曲を聴いてみて下さい。

 これは、以前このブログでもとりあげたシンドン率いるSuper Juniorの「美人(BONAMAMA)」という曲です。空耳職人が大活躍しそうなダンスナンバーです。僕は韓国語が全く分からないので、この曲の歌詞が何を言わんとしているかは1mmも理解できません。実は「日本人の男はインポばっかだぜ」みたいな内容かもしれないし「あずにゃんぺろぺろ」みたいな話かも笑。とにかく、何言ってるかわけわかんないけど僕はこの曲が好きで、割とよく聴いてます。

 なんでこの曲がいいのかなぁって一生懸命考えてみました。まず、歌詞の意味は全く分からない。だから「中島みゆきの曲は泣ける」みたいな楽しみ方は、そもそもしていない。物語のレベルでは、全然気持ち良くない。もっと別なところで、僕は「美人(BONAMAMA)」をエンジョイしているはず。

 この曲で一番頭に残るのは、最初っから最後までほぼずっと鳴り続けてる「だったらった♪だったらった♪」という繰り返しのフレーズだと思います。イントロのとこでSuper Juniorも言ってますね。だったらった♪だったらった♪

 サビのあと、動画で言うと1分40秒のあたりに注目してみてください。ここでは、韓国語の歌詞と、「だったらった♪だったらった♪」が綺麗に同調しています。ちょっと聴き取ってみます。

ぽっかめっか♪×3 なまっちゅなんじゃ♪
ぼんっちゃまっちぇ♪×3 とらっそぱっと♪
ぽっくぱっと♪×3 なばっけよっけ♪
ぼんなまっんな♪×3 くぁwせdrftgyふじこlp!!

こんな感じですね。♪で区切ったところが「だったらった♪」に対応しています。同じリズムが続くのって気持ちいいもんだと僕は思ってて。盆踊りとかね。僕が「美人(BONAMAMA)」を聴いてて気持ちいいのは、歌詞の意味はわからないけれど、その歌詞が繰り返しのフレーズを強調しているからです。中島みゆきの曲が「物語の内容」で僕の興味をひいているのに対して、Super Juniorの曲を聴いている僕は「後ろで鳴ってる音と、それに合った歌詞」にテンションがあがっています。

 ラップの魅力その2は『曲と歌詞のシンクロ』です。さっきも書きましたが、ラップには音程がない。でも、後ろで音は鳴ってる。ラップの楽曲は「美人(BONAMAMA)」みたいに、同じフレーズがずーっと繰り返されることが多いです(バックトラック、なんて呼びます)。そこで、ああいう歌い方になるのです。音程をつけずにバックトラックに合わせて気持ち良く聴こえる歌詞を歌おうとするとどうなるか。繰り返しのフレーズの頭、もしくはお尻の音を強調する、という歌い方になります。

 Super Juniorの曲も、上に書いた四行の頭は「はひふへほ+濁点or半濁点」で統一されています。「だったらった♪」の最初の「だ」に合わせて、「ぼ」もしくは「ぽ」という破裂音を乗っけてます。これが「韻を踏む(ライムする)」ということです。ラップのバックトラックは「美人(BONAMAMA)」よりもっと繰り返しが強調されていることが多いので、韻の踏み方も過激になっています。ラップ特有のイントネーションは、韻を踏むこと、そしてバックトラックに同調するためのものです。別にDQNぶってああなっているわけではない…はず(笑)

 ここまでの話をまとめます。ラップを聴くうえで注目したら楽しいんじゃないかな、ってところは
『面白い・感心する歌詞』
『曲と歌詞のシンクロ』
の二点です。歌声に音程がないから、歌詞をよく聴いてみてください。後ろでは、決められたフレーズが繰り返されています。MC(ボーカル)は、韻を踏んだり曲にあった言葉を選んだりしながら、面白いこと言います。サビでは、パンチラインをかっこよくカマします。

 んじゃ、最後にこの二曲をどうぞ。僕が大大大好きなRHYMESTERの「K.U.F.U.」と「そしてまた歌いだす」です。最初の「K.U.F.U.」はおもしろカッコいい感じ。「そしてまた歌いだす」はポジティブなメッセージソングです。長々読んで頂いてありがとうございました!ライムス最高だぜ!