レトロメモリー

 昔話。

 僕が飽きもせず大学生活を謳歌しているうちに、高校生の頃付き合っていた女の子は母親になったそうだ。時の流れの速さがすこし怖い。

 蝶の羽ばたきが竜巻を起こす、なんて話を思い出した。たくさんの選択が複雑に影響し合って、いま僕はここでこうしている。ありえたはずの無限の未来を無自覚に踏み潰しながら、一本の長い糸を辿っている。これまでもそうだし、これからもきっとそうだろう。僕にも、そして彼女にも、幸せになる義務がある。潰えた可能性に後ろ指をさされないためにも。